指示される時
社会人になり、会社に属して働くと、必ずと言っていいほど「上司」や「先輩」と呼ばれる関係性の人と一緒に仕事をすることになる。
私にも上司や先輩がいて、たまには自分がそちら側になることもある。
今は転職したてということで私を上司や先輩と呼ぶ人は1人もいないのだけれど。
さて、上司や先輩は、その部下や後輩たちに指示をする。
あれをやって、これをやって、こんな風にやって。
その指示の仕方はまさに十人十色だと、社会人になって8年、私はずっと思っている。
ある先輩に付いてOJTを受けている時にはとても困った。
その先輩は断片的にしか教えてくれない。
例えば、「ユーザーのリストを作って。ここからエクスポートして、こっちのリストと結合する。あ、値貼り付けでね。そんでリネームして送っておいて」と。
私の乏しい理解力ではこの指示だと「あぁこれはユーザーのリストなのね。はいはい作るよ」としか思えない。
ある時には「このレシートを日付順に並べ替えて、紙に貼って」と。
後日それは経費精算に回す用の資料だったと分かるのだけれど、それだったら貼り方変えたわ!!と思うことがあった。
それに、断片的に話されても、自分がやっていることが最終的にどうなって、どんなゴールを目指しているのかわからず、ただの作業としか思えなかった。
私はまず全体感から把握したい。
何のためにこの作業は必要なのか。
全体の締め切りはいつなのか。
ざっくりとした工程はどんなものなのか。
「そっか、そういうプロジェクトなんだ!じゃあもっとこうしたら、後の人が楽だよね。あとこれもやっておいたほうがいいよね」ってなる。
そういうようなことが分かれば、モチベーションも上がるし、工夫することだってできるのに。
でもそんなことを上司や先輩に求めるのは違うのかもしれない。
自ら調べ、お伺いを立て、ぐいぐいやるものなのかもしれない。
そんなモヤモヤを抱えていた私だったが、とある上司と仕事をして考えかたを変えた。
その上司は、私の勤務初日にこう聞いてくれた。
「たら子さんは仕事の指示をされる時、全体感から話してほしい?それとも目の前のことだけ聞きたい?」
めちゃくちゃ嬉しかった。
もちろん、「全体感を聞きたいです。そのうえで工夫ができたらと思います」と私は答えたのだった。
その嬉しい気持ちとモヤモヤしていたことを後々その上司に話したのだけれど、そんなの部下がやりやすいように整えてあげるのも上司の仕事なのだからその部下に合わせてやってあげるべきに決まってるじゃないかと、上司は言っていた。
それを私は真似ることにして、これまで社会人をやってきた。
この春、といっても、もう来月。
新卒の新入社員が入ってくる。
教育係りを命じられた。
若い頃に感じたモヤモヤや不安を思い出して、丁寧に接していきたいと、とてもとても思っている。
自分が何に向かっているのか分かればちょっとだけ怖さも和らぐ。
この単純作業の行く先に何かあるのか知っていればちょっとだけがんばれる。
初めての仕事は、怖くて不安で、さらにスキルがまだちょっとしかないからドキドキ。
そんな彼女の、少しでも手助けができるように指示の仕方には気を遣います。